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限定承認の件数はごくわずか! マイナーになる3つの理由
2026/06/30

相続には3つの方法がある
相続が発生したとき、相続人は基本的に次の3つの方法から選択することになります。
- 単純承認
- 相続放棄
- 限定承認
それぞれの内容は、大きく異なります。
単純承認
単純承認とは、被相続人の財産をすべて引き継ぐ方法です。
ここでいう財産には、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や未払金などのマイナスの財産も含まれます。
例えば、被相続人に次のような財産があったとします。
- 預貯金
- 自宅や土地
- 空き家
- 車
- 株式
- 借入金
- 未払いの税金
- 保証債務
単純承認をすると、これらをまとめて引き継ぐことになります。
プラスの財産が多ければ問題は少ないですが、借金が多い場合は注意が必要です。
相続した財産だけでは借金を返しきれない場合、相続人自身の財産から支払わなければならない可能性があります。
相続放棄
相続放棄とは、被相続人の財産を一切引き継がない方法です。
相続放棄をすると、最初から相続人ではなかったものとして扱われます。
そのため、借金を引き継がずに済む一方で、預貯金や不動産などのプラスの財産も引き継ぐことはできません。
例えば、
- 借金が多い
- 財産より負債のほうが明らかに多い
- 空き家や土地の管理を引き継ぎたくない
- 他の相続人と関わりたくない
- 相続トラブルに巻き込まれたくない
といった場合に検討されることがあります。
限定承認
限定承認とは、相続によって得たプラスの財産の範囲内で、マイナスの財産を引き継ぐ方法です。
つまり、借金があったとしても、相続人自身の財産から返済する必要はありません。
例えば、次のようなケースです。
- プラスの財産:1,000万円
- マイナスの財産:1,500万円
単純承認をすると、差額の500万円について相続人が負担する可能性があります。
一方、限定承認を選択すれば、相続財産1,000万円の範囲で債務を弁済すればよく、相続人自身の財産から不足分を支払う必要はありません。
このように、限定承認は「財産と借金のどちらが多いかわからない」ときに有効な制度です。
限定承認はほとんど利用されていない
限定承認は、一見すると相続放棄より柔軟で便利な制度に見えます。
しかし、実際にはあまり活用されていません。
裁判所が公表している司法統計によると、2024年の相続放棄の件数は30万8,753件です。
一方、限定承認の件数は690件にとどまっています。
つまり、相続放棄は年間30万件を超えているのに対し、限定承認は1,000件にも届いていません。
限定承認の件数は、1949年には181件でしたので、長期的に見ると増えてはいます。
しかし、それでも相続放棄と比べると圧倒的に少ないのが実情です。
なぜここまで利用件数に差があるのでしょうか。
その理由は、限定承認の手続きが非常に複雑で、費用や要件の面でもハードルが高いからです。
限定承認とはどのような制度か
限定承認とは、被相続人の債務がどれくらいあるかわからない場合に、相続で取得した財産の範囲内で債務を引き継ぐ制度です。
ここでいうプラスの財産には、次のようなものがあります。
- 現金
- 預貯金
- 不動産
- 株式
- 投資信託
- 車
- 貴金属
- 家財
- 売掛金
- 貸付金
一方、マイナスの財産には、次のようなものがあります。
- 借金
- 住宅ローン
- 事業資金の借入
- 未払いの税金
- 未払いの医療費
- 未払いの家賃
- クレジットカード債務
- 保証債務
相続では、プラスの財産だけを都合よく引き継ぐことはできません。
単純承認をすれば、原則としてプラスの財産もマイナスの財産もまとめて引き継ぎます。
しかし、限定承認を選べば、相続財産の範囲内で負債を清算することができます。
そのため、
- 借金があるかもしれない
- 保証人になっていた可能性がある
- 財産と負債のどちらが多いかわからない
- どうしても残したい財産がある
- 相続放棄するか迷っている
という場合に検討される制度です。
限定承認が使われにくい理由1:手続きが大変
限定承認があまり利用されない最大の理由は、手続きが大変だからです。
限定承認をする場合、相続開始があったことを知った日から3か月以内に、家庭裁判所へ申述を行う必要があります。
この3か月という期間は、相続放棄と同じです。
しかし、限定承認には相続放棄にはない大きな注意点があります。
それは、相続人全員で共同して行う必要があるという点です。
相続人が1人だけであれば問題は少ないかもしれません。
しかし、相続人が複数いる場合は、全員が限定承認に同意し、共同で手続きを進める必要があります。
例えば、相続人が次のような状況だと、手続きは簡単ではありません。
- 相続人同士の関係が悪い
- 一部の相続人と連絡が取れない
- 相続人が遠方に住んでいる
- 相続人の中に高齢者がいる
- 相続財産や借金の内容について意見が分かれている
- 相続人の一人が単純承認を希望している
このような場合、3か月以内に全員の意思をまとめることは大きな負担になります。
さらに、限定承認では、家庭裁判所への申述だけで手続きが終わるわけではありません。
その後も、
- 相続財産の調査
- 債権者への公告
- 官報公告
- 債権者や受遺者への弁済
- 相続財産の換価
- 配当手続き
- 必要に応じた税務申告
などが必要になります。
実務上、相続人だけで進めるのは難しく、弁護士や司法書士などの専門家に依頼するケースが多くなります。
これが、限定承認の利用が少ない大きな理由です。
限定承認が使われにくい理由2:費用がかかる
限定承認は、相続放棄に比べて費用がかかりやすい手続きです。
必要になる可能性がある費用としては、次のようなものがあります。
- 家庭裁判所への申述費用
- 戸籍などの取得費用
- 官報公告費用
- 郵送費
- 専門家への報酬
- 不動産評価や売却に関する費用
- 税理士への申告報酬
特に、限定承認は手続きが複雑なため、専門家に依頼することが多く、その分の報酬が発生します。
また、限定承認では税務上の注意も必要です。
限定承認を行った場合、税務上、被相続人から相続人に対して、財産が時価で譲渡されたものとみなされることがあります。
その結果、含み益のある不動産や株式などがある場合には、譲渡所得が発生する可能性があります。
この場合、相続人は被相続人に代わって、所得税の申告を行う必要があります。
これを準確定申告といいます。
準確定申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に行う必要があります。
相続税の申告期限は10か月以内ですが、準確定申告は4か月以内のため、より早い対応が求められます。
限定承認を選ぶ場合は、法務だけでなく税務の面でも注意が必要です。
限定承認が使われにくい理由3:要件が厳しい
限定承認は、いつでも自由に認められるわけではありません。
相続人が一定の行為をしてしまうと、法律上、相続する意思があるとみなされ、限定承認ができなくなることがあります。
これを法定単純承認といいます。
法定単純承認にあたる可能性がある行為には、次のようなものがあります。
- 相続財産である不動産を売却する
- 被相続人の預貯金を私的に使う
- 相続財産を隠す
- 財産目録に一部の財産を記載しない
- 相続財産を勝手に処分する
- 賃貸借契約を安易に解約する
- 相続財産を自分のものとして扱う
例えば、「葬儀費用に使うだけだから」「少額だから大丈夫だろう」と思って被相続人の預貯金を引き出した場合でも、状況によっては問題になることがあります。
また、空き家や土地などの不動産がある場合も注意が必要です。
相続放棄や限定承認を検討している段階で、勝手に売却したり、賃貸借契約を解約したり、家財を処分したりすると、単純承認したと判断される可能性があります。
一度、法定単純承認に該当すると、限定承認や相続放棄が認められなくなるおそれがあります。
そのため、相続財産に手をつける前に、慎重に判断することが大切です。
限定承認にもメリットはある
限定承認は手続きが大変で、費用もかかり、要件も厳しい制度です。
そのため、実際にはあまり利用されていません。
しかし、限定承認には相続放棄にはないメリットもあります。
代表的なメリットは、どうしても残したい財産を取得できる可能性があることです。
例えば、被相続人が大切にしていた指輪や時計、絵画、土地、実家などがあるとします。
借金が多い可能性があるため単純承認は避けたい。
しかし、思い出の品や特定の財産だけはどうしても残したい。
このような場合、限定承認を行った相続人は、一定の手続きを経て、相続財産の一部を優先的に取得できることがあります。
これを先買権といいます。
先買権を使えば、相続人がその財産を評価額で買い取る形で取得できる可能性があります。
相続放棄をした場合は、最初から相続人ではなかったものとして扱われるため、このような権利を行使することはできません。
そのため、限定承認は、
- 借金の有無がわからない
- どうしても残したい財産がある
- 不動産や家業資産を守りたい
- 相続放棄は避けたいが、債務を無制限には負いたくない
という場合に、検討する価値があります。
不動産がある相続では限定承認の判断に注意
相続財産に不動産が含まれる場合、限定承認を検討する場面があります。
例えば、次のようなケースです。
- 被相続人に借金があるかもしれない
- 事業をしていたため保証債務が不明
- 自宅や土地だけは残したい
- 空き家を相続するか迷っている
- 不動産の価値と借金の金額がはっきりしない
- 売却すれば借金を返せる可能性がある
- 彦根市周辺の実家や土地を手放すか判断できない
不動産は、預貯金のようにすぐ金額がわかるものではありません。
同じ不動産でも、
- 固定資産税評価額
- 相続税評価額
- 実際の売却価格
- 不動産会社の査定価格
は異なることがあります。
そのため、借金と不動産価値のどちらが大きいのかを判断するには、早めに不動産の評価や査定を確認することが重要です。
特に空き家や古家付き土地の場合は、
- 建物を残して売るのか
- 解体して売るのか
- 買取を検討するのか
- 賃貸活用できるのか
- 管理費や修繕費がどれくらいかかるのか
によって、判断が変わります。
限定承認を検討する場合は、相続開始から3か月以内という期限があるため、不動産の調査も早めに進める必要があります。
相続放棄と限定承認の違い
相続放棄と限定承認は、どちらも借金の負担を避けるために検討される制度です。
しかし、内容は大きく異なります。
相続放棄が向いているケース
相続放棄は、次のような場合に検討されます。
- 借金が明らかに多い
- 相続したい財産がない
- 空き家や土地を引き継ぎたくない
- 相続人同士の関係が悪い
- 相続手続きに関わりたくない
- 財産よりも管理負担のほうが大きい
相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産も一切引き継ぎません。
手続きは家庭裁判所で行う必要がありますが、限定承認よりは比較的シンプルです。
限定承認が向いているケース
限定承認は、次のような場合に検討されます。
- 借金の額がはっきりしない
- プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いかわからない
- どうしても残したい財産がある
- 被相続人の自宅や土地を守りたい
- 相続放棄すると困る事情がある
- 財産調査をしてから判断したい
ただし、限定承認は相続人全員で行う必要があり、手続きも複雑です。
実際に選択する場合は、専門家に相談しながら慎重に進めることが大切です。
相続財産に手をつける前に確認すること
限定承認や相続放棄を検討している場合、相続財産に不用意に手をつけないことが重要です。
まず確認したいことは、次のとおりです。
- 被相続人の借金の有無
- 住宅ローンや事業借入の有無
- 保証人になっていないか
- 未払い税金や医療費の有無
- 預貯金の残高
- 不動産の有無
- 不動産の現在価値
- 空き家や土地の管理費用
- 相続人の人数
- 遺言書の有無
特に不動産がある場合は、固定資産税の通知書や登記事項証明書を確認し、どのような不動産があるのかを整理することが大切です。
彦根市周辺で相続した不動産がある場合も、早めに価値を確認しておくことで、単純承認、相続放棄、限定承認のどれを選ぶべきか判断しやすくなります。
まとめ
限定承認とは、相続によって取得したプラスの財産の範囲内で、借金などのマイナスの財産を引き継ぐ制度です。
借金がどれくらいあるかわからない場合や、どうしても残したい財産がある場合には、有効な選択肢になることがあります。
しかし、実際には限定承認の利用件数は非常に少なく、相続放棄と比べても大きな差があります。
限定承認があまり使われない主な理由は、次の3つです。
- 相続人全員で手続きする必要があり、手続きが大変
- 官報公告や専門家費用、税務申告などで費用がかかる
- 財産の処分や隠匿があると、単純承認とみなされるおそれがある
一方で、限定承認には、相続放棄ではできないメリットもあります。
特に、思い出の品や自宅、土地など、どうしても残したい財産がある場合には、限定承認を検討する価値があります。
ただし、限定承認は期限があり、手続きも複雑です。
相続開始を知った日から3か月以内に判断する必要があるため、借金や不動産の有無がわからない場合は、早めに財産調査を進めることが大切です。
彦根市周辺で、実家、空き家、土地、賃貸物件などを相続する可能性がある場合は、相続財産の価値や管理負担を早めに確認し、相続放棄・限定承認・単純承認のどれが適しているのかを慎重に判断しましょう。
監修者情報
- 商号
- 株式会社 トラストエージェント
- 代表
- 代表取締役 臼井 大典📞0749-26-2103
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