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相続時によく聞く遺留分とは?
2026/06/16
遺留分とは?遺言があっても守られる最低限の相続権
相続が発生したとき、亡くなった方が遺言書を残している場合、その内容は原則として尊重されます。
しかし、遺言書の内容が極端なものだった場合、残された家族の生活に大きな影響が出ることがあります。
たとえば、
- 長男にすべての財産を相続させる
- 特定の子どもだけに不動産を相続させる
- 内縁の相手に全財産を遺贈する
- お世話になった第三者にすべての財産を渡す
- 相続人ではない団体や法人に財産を寄付する
といった遺言があった場合、配偶者や子どもがほとんど財産を受け取れないことがあります。
もちろん、遺言は被相続人の意思を示す大切なものです。
しかし、相続人の生活保障や、家族が財産形成に貢献してきた事情も無視することはできません。
そこで民法では、一定の相続人に対して、最低限取得できる財産の割合を認めています。
これが 遺留分 です。
今回は、遺留分とは何か、誰に認められるのか、どのくらい請求できるのか、遺言と遺留分の関係、不動産相続で起こりやすいトラブルまで、わかりやすく解説します。
遺留分とは
遺留分とは、簡単にいうと 一定の相続人に保障された最低限の相続分 のことです。
遺言や生前贈与によって、特定の人に財産が偏って渡された場合でも、一定の相続人は最低限の取り分を主張できます。
たとえば、父が亡くなり、遺言書に「全財産を長男に相続させる」と書かれていたとします。
この場合でも、配偶者や他の子どもには遺留分が認められることがあります。
遺留分制度があることで、遺言による一方的な財産分配によって、残された家族が著しく不利益を受けることを防ぐことができます。
裁判所も、遺留分について「一定の相続人について、被相続人の財産から法律上取得することが保障されている最低限の取り分」と説明しています。
遺留分が認められる理由
遺留分が認められている主な理由は、相続人の保護です。
具体的には、次のような考え方があります。
- 残された配偶者や子どもの生活を守るため
- 家族が財産形成に貢献してきた事情を考慮するため
- 遺言による極端な財産分配を調整するため
- 相続人間の公平を一定程度確保するため
- 被相続人の意思と相続人保護のバランスを取るため
遺言書はとても重要ですが、どのような内容でも完全に自由というわけではありません。
民法では、被相続人の意思を尊重しながらも、一定の相続人には最低限の権利を残しているのです。
遺留分が認められる人
遺留分が認められるのは、すべての法定相続人ではありません。
民法では、遺留分が認められる人を 兄弟姉妹以外の相続人 としています。民法第1042条では、兄弟姉妹以外の相続人に遺留分があること、直系尊属のみが相続人の場合は3分の1、それ以外の場合は2分の1という割合が定められています。
遺留分が認められる主な人は、次のとおりです。
- 配偶者
- 子ども
- 子どもが亡くなっている場合の孫などの代襲相続人
- 父母
- 父母が亡くなっている場合の祖父母などの直系尊属
一方で、兄弟姉妹には遺留分がありません。
また、兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合に相続人になる甥や姪にも、遺留分はありません。
兄弟姉妹には遺留分がない
遺留分を考えるうえで、特に間違いやすいのが兄弟姉妹の扱いです。
たとえば、被相続人に配偶者や子ども、父母がおらず、兄弟姉妹だけが法定相続人になるケースがあります。
この場合、兄弟姉妹は法定相続人ではあります。
しかし、遺留分はありません。
そのため、被相続人が遺言書で「全財産を友人に遺贈する」としていた場合、兄弟姉妹は原則として遺留分を主張できません。
これは、甥や姪が代襲相続人になる場合も同じです。
兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる家庭では、遺言書の内容が非常に重要になります。
遺留分の割合
遺留分の割合は、相続人の組み合わせによって変わります。
民法上の基本的な割合は、次のとおりです。
- 直系尊属のみが相続人の場合:相続財産の3分の1
- それ以外の場合:相続財産の2分の1
直系尊属とは、父母や祖父母など、被相続人より上の世代の親族をいいます。
つまり、父母だけが相続人になる場合は、全体の遺留分は3分の1です。
一方、配偶者や子どもが相続人に含まれる場合は、全体の遺留分は2分の1になります。
遺留分の具体例
遺留分は、まず全体の遺留分を確認し、そのうえで各相続人の法定相続分に応じて計算します。
配偶者と子ども1人が相続人の場合
配偶者と子どもが相続人の場合、全体の遺留分は2分の1です。
法定相続分は、
- 配偶者:2分の1
- 子ども:2分の1
です。
そのため、各自の遺留分は次のようになります。
- 配偶者:2分の1 × 2分の1 = 4分の1
- 子ども:2分の1 × 2分の1 = 4分の1
つまり、配偶者と子ども1人がいる場合、それぞれ相続財産の4分の1が遺留分となります。
配偶者と子ども2人が相続人の場合
配偶者と子ども2人が相続人の場合も、全体の遺留分は2分の1です。
法定相続分は、
- 配偶者:2分の1
- 子ども全体:2分の1
です。
子どもが2人いるため、子ども1人あたりの法定相続分は4分の1です。
各自の遺留分は次のようになります。
- 配偶者:2分の1 × 2分の1 = 4分の1
- 子ども1人目:2分の1 × 4分の1 = 8分の1
- 子ども2人目:2分の1 × 4分の1 = 8分の1
子どもが複数いる場合は、子ども全体の遺留分を人数で分けることになります。
子どもだけが相続人の場合
配偶者がおらず、子どもだけが相続人の場合、全体の遺留分は2分の1です。
子どもが1人であれば、その子の遺留分は2分の1です。
子どもが2人であれば、
- 子ども1人目:4分の1
- 子ども2人目:4分の1
となります。
子どもが3人であれば、
- 子ども1人あたり:6分の1
となります。
配偶者と父母が相続人の場合
被相続人に子どもがおらず、配偶者と父母が相続人になる場合、全体の遺留分は2分の1です。
法定相続分は、
- 配偶者:3分の2
- 父母全体:3分の1
です。
そのため、各自の遺留分は次のようになります。
- 配偶者:2分の1 × 3分の2 = 3分の1
- 父母全体:2分の1 × 3分の1 = 6分の1
父母が2人とも存命の場合は、父母全体の6分の1を2人で分けるため、それぞれ12分の1になります。
父母だけが相続人の場合
配偶者も子どももおらず、父母だけが相続人になる場合、直系尊属のみが相続人であるため、全体の遺留分は3分の1です。
父母が2人とも存命の場合は、
- 父:6分の1
- 母:6分の1
となります。
父母のどちらか一方だけが存命の場合は、その人の遺留分は3分の1です。
配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合
被相続人に子どもも父母もおらず、配偶者と兄弟姉妹が相続人になる場合、注意が必要です。
兄弟姉妹には遺留分がありません。
この場合、遺留分を持つのは配偶者のみです。
配偶者の遺留分は、相続財産の2分の1です。
兄弟姉妹には遺留分がないため、被相続人が「全財産を配偶者に相続させる」という遺言書を作成しておけば、兄弟姉妹から遺留分を請求されることはありません。
子どものいない夫婦では、遺言書の作成が相続対策として非常に重要です。
遺言と遺留分はどちらが優先されるのか
遺言書がある場合、原則として遺言書の内容が優先されます。
ただし、遺言書によって遺留分を侵害された相続人は、侵害された分について金銭の支払いを求めることができます。
つまり、遺言書の内容がすぐに無効になるわけではありません。
現在の制度では、遺留分を侵害された人は、受遺者や受贈者に対して 遺留分侵害額請求 を行い、侵害額に相当する金銭の支払いを求めることになります。
裁判所も、遺留分侵害額の請求について、贈与または遺贈を受けた者に対し、侵害額に相当する金銭の支払いを請求できるものと説明しています。
遺留分侵害額請求とは
遺留分侵害額請求とは、遺留分を侵害された相続人が、財産を多く受け取った人に対して、侵害された金額の支払いを求める制度です。
たとえば、被相続人が「全財産を長男に相続させる」という遺言を残していた場合、他の相続人が遺留分を侵害されていれば、長男に対して金銭の支払いを請求できます。
ここで重要なのは、遺留分侵害額請求は 自動的に支払われるものではない という点です。
遺留分を侵害された相続人が、自ら意思表示をする必要があります。
一般的には、
- 相続財産の内容を確認する
- 遺言書の内容を確認する
- 自分の遺留分を計算する
- 侵害額を確認する
- 相手方に請求の意思表示をする
- 話し合いを行う
- 解決しない場合は調停や訴訟を検討する
という流れになります。
内容証明郵便で意思表示をすることが多い
遺留分侵害額請求を行う場合、まずは相手方に対して請求の意思表示を行います。
口頭で伝えることも理論上は可能ですが、後で「言った・言わない」の争いになる可能性があります。
そのため、実務上は内容証明郵便など、証拠が残る方法で意思表示を行うことが一般的です。
裁判所も、遺留分侵害額の請求は、権利を行使する旨の意思表示を相手方にする必要があり、調停の申立てだけでは相手方に対する意思表示にはならないため、別途内容証明郵便等により意思表示を行う必要があると説明しています。
この点は非常に重要です。
家庭裁判所に調停を申し立てたからといって、それだけで時効対策になるとは限りません。
期限が近い場合は、弁護士などの専門家に早めに相談することをおすすめします。
遺留分侵害額請求には期限がある
遺留分侵害額請求には、期間の制限があります。
民法第1048条では、遺留分侵害額の請求権について、相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは時効によって消滅し、相続開始から10年を経過したときも同様とされています。
つまり、遺留分侵害額請求の期限は、原則として次のとおりです。
- 相続開始と遺留分侵害を知った時から1年
- 知らなくても相続開始から10年
この期限を過ぎると、遺留分を請求できなくなる可能性があります。
相続では、四十九日や納骨、名義変更、相続税申告、不動産の整理などで慌ただしくなりがちです。
しかし、遺留分の請求期限は1年と短いため、遺言書の内容に納得できない場合や、自分の取り分が極端に少ないと感じる場合は、早めに確認することが大切です。
話し合いで解決しない場合は調停を利用できる
遺留分侵害額請求は、まず当事者同士の話し合いで解決を目指すことが多いです。
しかし、相手方が支払いに応じない場合や、財産評価で意見が合わない場合には、家庭裁判所の調停を利用することができます。
裁判所では、遺留分侵害額の請求について当事者間で話し合いがつかない場合や話し合いができない場合、家庭裁判所の調停手続を利用できると案内しています。
調停では、当事者双方の事情を聞き、必要な資料を確認しながら、解決に向けた話し合いが進められます。
それでも解決できない場合には、訴訟に進むこともあります。
不動産がある相続では遺留分トラブルが起きやすい
遺留分の問題は、不動産が相続財産に含まれる場合に特に起こりやすくなります。
なぜなら、不動産は現金のように簡単に分けられないからです。
たとえば、次のようなケースです。
- 長男が実家を相続する遺言がある
- 他の兄弟が遺留分を請求する
- 相続財産の大半が不動産で現金が少ない
- 不動産を売らないと遺留分を支払えない
- 不動産の評価額をめぐって意見が対立する
- 収益物件の価値や家賃収入の扱いで揉める
- 空き家を誰が管理するか決まらない
たとえば、相続財産が実家の土地建物と少額の預貯金だけだった場合、実家を相続した人が、他の相続人へ遺留分相当額を現金で支払わなければならないことがあります。
しかし、手元に現金がなければ、支払いのために不動産を売却する必要が出てくることもあります。
このように、不動産相続では「誰が不動産を取得するか」だけでなく、「他の相続人への支払いをどうするか」まで考えておく必要があります。
遺言書を作る側が注意すべきこと
遺言書を作成する場合、遺留分を無視した内容にすると、相続後にトラブルが起こる可能性があります。
もちろん、特定の相続人に多く財産を残したい事情があることもあります。
たとえば、
- 同居して介護してくれた子に多く残したい
- 家業を継ぐ子に事業用不動産を残したい
- 配偶者の生活を守るため自宅を残したい
- 障がいのある子の生活資金を確保したい
- 相続人以外の人に財産を渡したい
といったケースです。
このような場合でも、遺留分に配慮した設計をしておくことで、相続後の争いを減らしやすくなります。
具体的には、
- 遺留分を計算したうえで遺言書を作る
- 遺留分相当額を現金や生命保険で準備する
- 不動産を取得する人に代償金の支払い能力があるか確認する
- 付言事項で遺言の理由を丁寧に説明する
- 生前贈与の履歴を整理する
- 不動産の評価額を把握しておく
- 専門家に内容を確認してもらう
といった準備が有効です。
遺留分を請求する側が注意すべきこと
遺留分を請求する側も、感情だけで動くのではなく、冷静に状況を整理することが大切です。
確認すべきポイントは次のとおりです。
- 自分に遺留分があるか
- 遺言書の内容はどうなっているか
- 相続財産の全体額はいくらか
- 生前贈与があるか
- 不動産の評価額はいくらか
- すでに受け取った財産があるか
- 請求期限を過ぎていないか
- 相手方に支払い能力があるか
- 話し合いで解決できる可能性があるか
特に不動産の評価額は、遺留分額に大きく影響します。
同じ不動産でも、固定資産税評価額、相続税評価額、実勢価格、査定価格では金額が異なることがあります。
不動産が関係する遺留分請求では、地域の相場を踏まえた評価が重要になります。
彦根市で不動産相続と遺留分を考える場合
彦根市で相続が発生し、相続財産に土地や建物が含まれている場合、遺留分の問題は特に慎重に考える必要があります。
彦根市内でも、不動産の価値は地域によって異なります。
たとえば、
- 彦根駅周辺の土地
- 南彦根駅周辺の住宅地
- 幹線道路沿いの事業用地
- 古くからの住宅地
- 空き家になっている実家
- 賃貸アパートや貸家
- 市街化調整区域に近い土地
- 駐車場や空き地
では、売却しやすさや評価額が大きく変わります。
遺留分の支払いが必要になった場合、不動産を売却して資金を作るのか、取得した人が自己資金で支払うのか、分割払いを検討するのか、早めに考える必要があります。
特に、相続した不動産を放置すると、
- 固定資産税の負担が続く
- 建物が老朽化する
- 空き家管理の手間が増える
- 草木や近隣トラブルが起こる
- 売却価格が下がる
- 相続人同士の関係が悪化する
といったリスクがあります。
遺留分の問題と不動産売却は、切り離して考えることができません。
遺留分トラブルを防ぐための対策
遺留分トラブルを防ぐためには、相続が起きる前から準備しておくことが大切です。
1. 財産目録を作る
まずは、どのような財産があるのかを一覧にしましょう。
- 預貯金
- 土地
- 建物
- 賃貸物件
- 空き家
- 株式
- 投資信託
- 生命保険
- 車
- 借入金
- 未払金
不動産については、所在地、名義、固定資産税評価額、利用状況、売却見込み額まで確認しておくと安心です。
2. 不動産の価値を確認する
遺留分は金額で問題になるため、不動産の価値を把握しておくことが重要です。
特に、相続財産の大部分が不動産の場合、評価額によって遺留分の金額が大きく変わります。
- いくらで売れそうか
- 賃貸需要はあるか
- 解体費用は必要か
- 境界は確定しているか
- 建物の状態はどうか
- 空き家として放置されていないか
こうした点を早めに確認しておくと、相続後の話し合いが進めやすくなります。
3. 遺留分に配慮した遺言書を作る
遺言書を作る場合は、遺留分に配慮することが重要です。
特定の人に財産を多く残したい場合でも、他の相続人の遺留分を完全に無視すると、相続後に請求を受ける可能性があります。
そのため、
- 誰に何を相続させるか
- なぜその分け方にするのか
- 遺留分を支払う資金はあるか
- 不動産を売却する必要があるか
- 生命保険を活用できるか
を検討しておきましょう。
4. 家族で早めに話し合う
相続の話は切り出しにくいものです。
しかし、何も話し合わないまま相続が発生すると、残された家族が困ることがあります。
特に不動産がある場合は、
- 実家を誰が引き継ぐのか
- 空き家になったらどうするのか
- 売却する場合は誰が手続きをするのか
- 固定資産税は誰が負担するのか
- 遺留分の支払い資金をどうするのか
を事前に考えておくことが大切です。
まとめ:遺留分は遺族を守る大切な権利
遺留分とは、一定の相続人に認められた最低限の相続権です。
遺言書がある場合でも、配偶者や子ども、父母などには遺留分が認められることがあります。
一方で、兄弟姉妹や甥・姪には遺留分がありません。
遺留分の基本的な割合は、
- 直系尊属のみが相続人の場合:3分の1
- それ以外の場合:2分の1
です。
遺留分を侵害された場合は、受遺者や受贈者に対して、侵害額に相当する金銭の支払いを求めることができます。
ただし、遺留分侵害額請求には期限があります。
- 相続開始と遺留分侵害を知った時から1年
- 相続開始から10年
この期限を過ぎると請求できなくなる可能性があるため、早めの対応が重要です。
また、不動産が相続財産に含まれる場合、遺留分の問題はさらに複雑になりやすくなります。
- 実家を誰が相続するのか
- 他の相続人への支払いをどうするのか
- 不動産を売却するのか
- 評価額をどう考えるのか
- 空き家をどう管理するのか
こうした問題を放置すると、相続人同士のトラブルや不動産の価値低下につながることがあります。
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