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「私道」の相続財産としての価値・評価額は?
2026/08/04

相続が発生すると、土地や建物だけでなく、被相続人が所有していた「私道」や「私道の共有持分」も相続財産になります。
私道は、自宅の敷地とは別の地番になっていたり、複数の所有者で持分を共有していたりすることが多く、相続手続きから漏れやすい不動産です。しかし、私道も登記された不動産である以上、遺産分割の対象となり、原則として相続登記が必要です。
また、道路には次のような異なる分類があります。
- 公道か私道か
- 建築基準法上の道路かどうか
- 不特定多数の人が通行する道路かどうか
- 特定の住民だけが利用する道路かどうか
これらは、それぞれ別の基準です。
「私道だから建物を建てられない」「公道だから必ず再建築できる」と単純に判断することはできません。土地の売却や相続税評価を考える際には、道路の所有者だけでなく、建築基準法上の道路種別、接道状況、実際の利用状況まで確認する必要があります。
私道と公道は何が違うのか
私道と公道の基本的な違いは、道路を誰が所有し、誰が管理しているかという点です。
公道
公道は、一般に国、都道府県、市区町村などが道路管理者として管理している道路です。
代表的なものには、次のような道路があります。
- 国道
- 都道府県道
- 市町村道
ただし、道路としての管理区分と、道路敷地の登記上の所有者が必ず一致するとは限りません。正確に確認するには、市道認定の状況と登記事項証明書の両方を調べる必要があります。
彦根市の市道認定状況は「彦根まっぷ」などで確認できますが、個別の道路については彦根市建設管理課への確認が確実です。
私道
私道は、個人や法人などの私人が所有または管理している道路です。
代表的な私道として、建築基準法第42条第1項第5号に基づく「位置指定道路」があります。
位置指定道路とは、土地を分譲する際などに、各宅地が建築基準法上の道路に接するよう新たに設けられ、行政から位置の指定を受けた道路です。彦根市でも「彦根市道路位置指定指導要綱」に基づいて道路位置指定が行われています。
私道の所有形態には、主に次のようなものがあります。
- 地主や分譲業者が道路全体を単独所有している
- 分譲地の所有者全員が私道を共有している
- 各所有者が私道の一部をそれぞれ単独所有している
- 私道全体を複数人が持分割合で共有している
- 宅地と道路部分が一筆の土地になっている
所有形態によって、相続登記の方法、維持管理費の負担、売却時に必要となる手続きが変わります。
私道にも財産価値はあるのか
私道だけを単独で購入したいという需要は、一般的には多くありません。
しかし、私道の権利は、その道路に接する宅地の利用価値と深く関係しています。
たとえば、自宅から公道に出るために私道を通らなければならない土地では、次のような点が重要です。
- 私道の所有権や共有持分を持っているか
- 通行する権利が明確になっているか
- 自動車の通行が認められているか
- 水道管、下水道管、ガス管などを工事できるか
- 掘削工事について所有者の承諾が得られるか
- 道路補修費を誰が負担するか
- 将来の建て替え時にも利用できるか
私道の権利が整理されていない土地は、売却時に買主や金融機関から詳しい説明を求められることがあります。
一方で、宅地と一緒に適切な私道持分を売却でき、通行や掘削に関する問題も整理されていれば、売却を進めやすくなります。
したがって、私道の価値は「道路部分だけの価格」ではなく、接している宅地の利用価値や売却可能性を支える権利として考える必要があります。
私道にも固定資産税がかかるのか
私道であっても、原則として土地である以上、固定資産税の対象になります。
ただし、一定の要件を満たす「公共の用に供する道路」と認められた場合には、固定資産税や都市計画税が非課税となることがあります。
不特定多数の人が自由に通行する私道
次のような私道は、公共性があると判断される可能性があります。
- 公道から別の公道へ通り抜けられる
- 通行者を限定していない
- 門扉や車止めなどの通行制限がない
- 一般の人が日常的に通行している
- 道路としての形状が明確である
地方税法上、「公共の用に供する道路」は固定資産税の非課税対象となりますが、実際の適用には自治体による利用状況の確認や申告が必要になる場合があります。登記簿上の地目が「公衆用道路」になっているだけで、自動的に非課税になるとは限りません。
特定の住民だけが利用する私道
次のような道路は、公共性が低いと判断され、固定資産税が課税される可能性があります。
- 袋小路で、沿道の住民しか利用しない
- 所有者や家族だけが利用している
- 関係者以外の通行を禁止している
- 門扉、チェーン、車止めなどを設置している
- 宅地の一部として利用されている
固定資産税の扱いは、道路の登記地目だけでなく、現況や利用実態によって判断されます。
彦根市では、固定資産の非課税について、必要に応じて申告書の提出や現地確認を行うと案内しています。私道が非課税の対象になるかについては、彦根市税務課資産税係に個別確認することが大切です。
固定資産税が非課税でも、相続税評価額がゼロとは限らない
固定資産税と相続税は、それぞれ別の制度です。
そのため、固定資産税がかかっていない私道であっても、必ず相続税評価額がゼロになるわけではありません。
反対に、固定資産税評価額が記載されている私道でも、相続税上は「不特定多数の者の通行の用に供されている私道」として評価しない場合があります。
私道の相続税評価は、相続開始時の実際の利用状況を基準に判断します。
私道の相続税評価額は「ゼロ」または「30%」が基本
私道の相続税評価は、財産評価基本通達24に基づき、大きく次の2つに分けられます。
不特定多数の人が通行する私道
公共性が高く、不特定多数の人が通行している私道は、原則として相続税評価を行いません。
つまり、相続税評価額はゼロです。
国税庁は、具体例として次のような私道を挙げています。
- 公道から公道へ通り抜けられる私道
- 行き止まりでも、集会所、公園、地域センター、商店街などへの通路として利用されている私道
- 公共バスの停留所や転回場として不特定多数の人が利用している私道
重要なのは、道路の幅ではなく、実際にどの程度の公共性があるかという点です。
特定の人だけが利用する私道
袋小路など、主に沿道住民や特定の関係者だけが利用する私道は、その土地を通常の宅地として評価した価額の30%相当額で評価します。
計算の基本的な考え方は、次のとおりです。
私道の相続税評価額
=私道でないものとして計算した宅地評価額×30%
路線価地域では路線価方式、倍率地域では倍率方式を使い、必要に応じて奥行価格補正、間口狭小補正、奥行長大補正などを反映します。
単純に「道路の面積×路線価×30%」と計算すればよいとは限らないため、実際の申告では注意が必要です。
具体的な計算例
私道でないものとして評価した価額が800万円で、その私道が特定の住民だけに利用されている場合は、次のようになります。
- 通常の宅地としての評価額:800万円
- 私道評価割合:30%
- 私道の相続税評価額:800万円×30%=240万円
さらに、被相続人が私道全体の4分の1の共有持分を持っていた場合は、概算で次のようになります。
- 私道全体の評価額:240万円
- 被相続人の持分:4分の1
- 相続財産に計上する金額:240万円×4分の1=60万円
私道単体では売却が難しいと感じていても、税務上は60万円の相続財産として計上しなければならない可能性があります。
自宅専用の路地状敷地は扱いが異なる
自宅の宅地から道路まで延びている専用通路など、隣接する宅地の所有者だけが利用する路地状部分は、必ずしも「私道の30%評価」になるとは限りません。
その路地状部分が自宅敷地と一体で利用されている場合は、私道として分けず、隣接する宅地と合わせて一画地の宅地として評価します。
「道路のように見えるから30%評価」と自己判断しないことが重要です。
行き止まりの道路でも、必ず30%評価になるわけではない
行き止まり道路は、一般的には沿道住民だけが利用するため、30%評価となるケースが多くなります。
ただし、行き止まりであっても、その先に公園、集会所、商店街、公共施設などがあり、不特定多数の人が日常的に利用している場合は、相続税評価額がゼロになる可能性があります。
反対に、登記地目が「公衆用道路」であっても、実際には沿道の居住者や月極駐車場の利用者しか通行していない袋小路であれば、評価額ゼロが認められないことがあります。
国税不服審判所でも、袋小路の大部分が沿道居住者など特定の人の通行に使われていた事例について、評価額をゼロとすることを認めなかった裁決があります。
「私道につき通行お断り」の看板には注意が必要
私道の所有者として、防犯や騒音、無断駐車を防ぐために、次のような看板を設置したいと考えることがあります。
- 私道につき通行お断り
- 関係者以外立入禁止
- 私有地につき進入禁止
- 居住者以外の通行禁止
しかし、このような看板、門扉、チェーン、車止めなどは、「一般の通行を認めていない」という所有者の意思を示す事情になり得ます。
そのため、相続税や固定資産税の判定で、公共性が低いと判断される材料になる可能性があります。東京都の道路非課税基準でも、一般通行を禁止する表示物や門扉、車止めなどは、利用上の制約として例示されています。
ただし、看板があるという一つの事実だけで、直ちに相続税評価額が30%になるわけではありません。
実際には、次のような事情を総合的に確認します。
- 看板の内容
- 看板が設置された時期
- 門扉や車止めの有無
- 通行人を実際に制限していたか
- 日常的に誰が通行していたか
- 公道から公道へ通り抜けられるか
- 公共施設や店舗への通路になっているか
- 道路の一部だけが制限されているのか
- 相続開始時点でどのように使われていたか
相続税評価を検討する際は、道路の写真、住宅地図、公図、現地の利用状況などを整理しておくと判断しやすくなります。
私道の相続登記も3年以内に行う必要がある
2024年4月1日から、相続登記が義務化されています。
私道や私道の共有持分も不動産であるため、相続によって取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません。
正当な理由なく申請を怠った場合は、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
特に注意したいのが、2024年4月1日より前に発生した相続です。
過去の相続で名義変更をしていない不動産も義務化の対象となっており、原則として2027年3月31日までに相続登記を行う必要があります。ただし、不動産を相続したことを知った日が2024年4月以降の場合は、その日から3年以内となります。
私道の共有持分は、自宅の登記事項証明書だけを確認しても見つからないことがあります。
次の資料を確認しましょう。
- 被相続人が所有していた不動産の権利証や登記識別情報
- 固定資産税の課税明細書
- 名寄帳
- 売買契約書
- 重要事項説明書
- 公図
- 私道部分の登記事項証明書
- 分譲当時の測量図や道路図面
2026年2月2日からは、登記官が特定の人の所有不動産を一覧化して証明する「所有不動産記録証明制度」も始まっています。被相続人名義の私道持分を見落としていないか確認する手段の一つになります。
2025年の建築基準法・省エネ法改正と私道の関係
2025年4月1日以降に着工する建物については、原則としてすべての新築住宅・非住宅に省エネ基準への適合が義務付けられました。
また、木造住宅の建築確認審査の対象範囲や、構造関係規定も見直されています。
この改正によって、私道の相続税評価方法が直接変更されたわけではありません。
しかし、相続した土地を将来売却したり、建て替えたりする場合には、これまで以上に次のような事項を早い段階で確認しておくことが重要です。
- 接している道路が建築基準法上の道路か
- 接道条件を満たしているか
- 道路位置指定の範囲がどこまでか
- セットバックが必要か
- 私道持分を所有しているか
- 通行や掘削に関する権利が明確か
- 上下水道管などの埋設状況
- 共有者から工事への協力が得られるか
- 境界が確定しているか
道路の権利関係が不明確なままでは、売却活動を始めてから問題が判明し、手続きが長期化することがあります。
私道を自治体へ寄附すれば公道にできるのか
私道を所有している場合、自治体へ寄附し、公道として管理してもらえないかと考える方もいるでしょう。
ただし、すべての私道を無条件で自治体へ移管できるわけではありません。
一般的には、次のような条件が問題になります。
- 道路の幅員
- 道路の形状
- 公道との接続状況
- 通り抜けの可否
- 排水設備の状態
- 舗装や側溝の状態
- 境界が確定しているか
- 抵当権などが付いていないか
- 共有者全員の合意があるか
- 自治体の道路認定基準を満たしているか
彦根市には、幅員1.2メートル以上4メートル未満の狭あい道路について、一定の要件を満たした場合に整備を進める制度があります。
彦根市の要綱では、道路が連続していること、一定の道路に接続していること、所有者が整備や後退用地の寄附に同意していることなどが要件とされています。認定後は、後退用地の測量や境界確定を行い、寄附手続きを進める仕組みです。
ただし、この制度は「どのような私道でも道路全体を市へ寄附できる」というものではありません。
対象となる道路、寄附できる範囲、必要な整備内容は個別に異なるため、事前に彦根市へ相談する必要があります。
彦根市内の私道については、相談内容に応じて次の窓口を確認するとよいでしょう。
- 建築基準法上の道路種別や位置指定道路
彦根市都市政策部 建築指導課
電話:0749-30-6125 - 市道認定や道路管理
彦根市建設部 建設管理課
電話:0749-30-6121 - 固定資産税の課税・非課税
彦根市総務部 税務課 資産税係
電話:0749-30-6138
私道を相続したときの確認事項
私道や私道持分が相続財産に含まれていると分かったら、次の順番で確認しましょう。
1.私道の登記内容を確認する
- 所在地番
- 登記地目
- 地積
- 所有者
- 共有持分
- 抵当権などの権利
- 宅地と別の土地になっているか
2.道路の種類を確認する
- 市道などの公道か
- 位置指定道路か
- 建築基準法第42条第2項道路か
- 建築基準法上の道路ではない通路か
- セットバックが必要か
3.実際の利用状況を確認する
- 通り抜けができるか
- 誰が利用しているか
- 不特定多数の人が通行しているか
- 看板や車止めがあるか
- 公共施設への通路になっているか
4.固定資産税と相続税の扱いを分けて確認する
- 固定資産税が課税されているか
- 非課税認定を受けているか
- 相続税評価額がゼロになるか
- 30%評価になるか
- 隣接宅地と一体評価する土地か
5.維持管理のルールを確認する
- 舗装や側溝の補修を誰が行うか
- 費用負担の割合
- 除雪や清掃の負担
- 水道・下水道工事の承諾
- 共有者間の取り決め
6.遺産分割協議書に記載する
私道持分を自宅と一緒に相続させる場合は、宅地や建物だけでなく、私道の所在、地番、地目、地積、持分まで正確に記載します。
私道だけが相続登記から漏れると、将来の売却時に追加の遺産分割協議や登記が必要になることがあります。
7.売却する場合は宅地と一体で査定する
私道部分だけの価格ではなく、次の点を含めて宅地全体の価値を判断します。
- 再建築の可否
- 接道状況
- 私道持分の有無
- 通行・掘削の権利
- 境界の確定状況
- 共有者との関係
- 維持管理負担
- 買主の住宅ローン利用への影響
私道の相続は「価値が低そうだから放置」で済ませないことが大切
私道は、一般の宅地と比べて単独で売却しにくく、所有している実感も薄い不動産です。
しかし、相続実務では次のような重要な意味を持っています。
- 相続税の課税対象になる可能性がある
- 相続登記義務化の対象になる
- 宅地の再建築や売却に影響する
- 通行やインフラ工事に関係する
- 共有者との管理トラブルが起こる可能性がある
- 私道持分がないことで売却が難しくなる場合がある
特に、彦根市内で相続した土地を売却する場合は、市道認定の有無、建築基準法上の道路種別、私道持分、通行・掘削の権利を早めに整理しておくことが重要です。
トラストエージェントでは、彦根市を中心に、相続不動産、空き家、空き地、私道を含む土地の売却相談を受け付けています。
弁護士、司法書士、税理士などの専門家とも連携し、相続手続きと不動産売却を一貫してサポートしています。
私道持分が相続財産に含まれているか分からない、相続した土地が売却できるか不安、道路の権利関係を整理したいという方は、相続登記や相続税申告の期限が迫る前にご相談ください。
トラストエージェント
- 所在地:滋賀県彦根市栄町二丁目6番65号
- 電話:0749-26-2103
- 受付時間:9:00~18:00
- 定休日:日曜日
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※本記事は一般的な制度を分かりやすく説明したものです。私道の相続税評価、固定資産税、道路種別、再建築の可否は、土地の形状、利用状況、権利関係、自治体の取扱いによって異なります。個別の税務判断は税理士、相続登記は司法書士、権利関係の紛争は弁護士、道路種別は彦根市などの担当窓口へご確認ください。
監修者情報
- 商号
- 株式会社 トラストエージェント
- 代表
- 代表取締役 臼井 大典📞0749-26-2103
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